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ようやくP3Pをクリアしましたので、創作に専念であります。
ということで、前回の続きでございます^^
ユリエスです。
前回の続きではありますが、単品でも読めますよー。
エステルの目はいつもまっすぐ前を見詰めている。
それは出会った頃から変わらない、純粋な光を湛えて。
俺には眩し過ぎると視線をそらせば、逆に隣から見上げられたのが分かった。
「ユーリ?」
短い髪を揺らしながら首を傾げるエステル。
どうして俺が見ていたことが分かるんだ。
内心その鋭さに驚きながらもそれを表に出さないように、俺はたった今エステルを見たとばかりに「なんだ?」と尋ねる。
ずるい、と思う。
けれど、俺にはおまえは眩し過ぎるんだ。
「いいかげん、答えてあげたら?」
ダングレストの酒場で一人、ユーリは騒がしい男たちの喧騒を背に酒の入ったグラスを傾ける。
向かいに座るジュディスに何の前振りもなく言われて目を見開いた。
「なんだよ、突然」
「分かっているんでしょ? この意味」
「さて、何のことかね」
薄く笑って、グラスを揺らす。カラリと氷とガラスがぶつかって音を奏でた。
「あら。意味が分からないくらい酔っているのかしら」
「・・・かもな」
ぐいっと残った酒を飲み干して、さらに一杯注ごうとするとその手を止められて彼女を見る。
「飲みすぎよ」
「そうでもないだろ?」
「いいえ。飲みすぎ」
艶やかな笑み。
「私の言った言葉を理解できないくらい飲んでいるんだもの。飲みすぎでしょ?」
「ジュディの言葉が難解なんじゃないのか?」
ユーリは酒を注ぎ足すことを『今』は諦めて目の前に並ぶ摘みを口に運んだ。
「じゃあ、分かりやすく言ってあげるわ」
すっと目が細くなる。
「いやいや、そこまでしてまで言わなくてもいいって」
「どうして? あなたにとって都合の悪いことだからかしら?」
こちらは諦めてほしいというのに、ジュディスは折れる所かまっすぐに切り込んできてユーリは苦笑を零すしかなかった。
「わかったよ。降参」
両手を挙げると、よろしいとばかりに微笑まれた。
「で? 聞きたいことはなんなんだ?」
「エステルのことよ。分かっているんでしょ」
やはり。と、ユーリは心の中でため息を吐く。
正直なところ、今は彼女の事について考えたくはなかった。
「エステルがどうしたって?」
「この期に及んで誤魔化すつもり?」
今度こそ槍が飛んできそうだと肩を竦める。
「誤魔化すも何も、俺にどうしろって言うんだ」
「あなら、エステルの気持ちに気が付いているんでしょ? そして、あなたもエステルと同じ感情を持ってる。でも、一向にその気持ちを伝えようとしていないわ。どうして?」
確かにユーリはエステルの気持ちに気が付いていた。そして、同じ気持ちをユーリもエステルに抱いている。
だが、そうだからと言って気持ちを伝えるのが当然のことだとは思えなかった。
この手は血に塗れ、すでに穢れてしまっている。そんな自分が彼女を手に入れていいとは思えなかった。
エステルには、幸せになってほしい。
その為には自分は傍にいてはいけないのだ。
もちろん、仲間として支えるしこの先二度と会わないなどと言うつもりはないけれど、己の気持ちを告げる事はない。
そう誓った。
「あなたってほんと・・・」
薄く笑みを浮かべただけで何も答えないユーリにジュディスは呆れたようにため息を吐く。おそらくユーリの考えている事がなんとなく分かったのだろう。
「バカね」
「・・・そうかもな」
ユーリはジュディスの言葉に頷いた。
「ただ、これだけは覚えておいてね」
酒瓶に手を伸ばしても今度は止められる事はなかったが、彼女の声の真剣さに自分から手を止める。
「あの子の幸せを決めるのは、あの子自身よ」
言われた言葉にハッとなった。
「・・・ちげぇねぇや」
確かにその通りだとユーリは笑う。
そうだ。
他でもない、エステルに「自分で決めろ」と教えたのは己なのだから。
「ジュディはほんと世話好きだよな」
「あら。あなたほどではないわよ」
二人揃って笑う。
「私はただあなたたちに笑っていてほしいだけ」
「サンキューな」
「どういたしまして」
艶やかに笑うジュディに感謝の言葉を述べて、ユーリは改めて酒をついで一口飲んだ。
いつもずっと逸らしていた。
正面から見つめるのが怖かったのだ。
まっすぐに、曇りのない瞳の眩しさを受け止められなくて。
だが、今度は・・・今度こそは・・・。
*****
今回はユーリ編でした。
当初はユーリのお話し相手をおっさんにしようかと思ったのですが、エステルの気持ちを理解しているのは同じ女性のジュディスかなーという事で彼女になりました^^
ユーリとジュディスの会話は常に含みのある感じなのでそれを意識しましたが、成功しているんだがどうなんだか^^;
それはさて置き、次回はいよいよユーリとエステルの出番!のはず。
頑張ります!
お題お借りしました。
配布元:ペトルーシュカ様
ありがとうございました。
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