×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
今回は婚約直後の話です。
堂郁ですが郁と柴崎しか出てきません(笑)
読んでくださる方は下のリンクからどうぞ。
しかしこのタイトルで堂上が出てこないとか(笑)
恋愛ではなくて、家族愛な話です。
「婚約おめでとう、笠原」
「・・・ありがとう」
柴崎の祝いの言葉を合図に、互いに持っていたマグカップを軽く打ち付ける。
「これから堂上教官は大変ねー」
「なんで?」
柴崎の気の毒そうに呟いてマグカップの中の紅茶を一口飲み込んだ。
「そりゃ、笠原の家から笠原を奪い取らなきゃいけないんだもの。大変でしょうが」
「うーん。確かに、お母さんを説得するのは大変だと思うけど・・・」
郁が図書隊の、しかも戦闘職種である事をいまだに納得し切れていない母が、同じ戦闘職種である堂上と結婚する事にいい顔をする訳がない。それどころか反対だろう。
説得する事を考えると今から気が重いことこの上ない。
「バカねー。敵はお母さんだけじゃないでしょうが」
「敵って・・・」
柴崎の表現に絶句しつつ、他に敵といったら誰になるのかと考えをめぐらす。
「お父さんとか?」
「まだいるでしょう」
「えー! いるぅ?」
誰よ。と口にしかけてぽんと脳内に三人の兄の顔が思い浮かんだ。
「まさか、兄ちゃんたちのこと?」
「そのまさかよ! こっちは思いつかないほうがびっくりよ」
呆れたようにため息をつかれ郁はふくれる。
「別に兄ちゃんたちは何も言わないと思うけどなぁ」
「何も言わなくても可愛い妹が連れてくる彼氏をなんとも思わないわけないでしょう。きっと、値踏みされるわよ~・・・」
「値踏みって・・・」
「あんたは笠原家の一人娘なの! 堂上教官はその一人娘をさらって行く男なのよ!」
なんだかその表現が恥ずかしくて頬が熱くなってくる。
「家族みんな、なんとも思わないわけないでしょうか」
軽く小突かれて肩を竦めた。
「それに、あんたのお父さん賛成してくれるとは限らないわよ」
「ええっ! で、でも! 教官とお父さん、なんだか親しそうだったし!」
「そんなの、笠原の上司だからでしょう? あんた、お父さんに堂上教官と付き合ってること言ったの?」
「い・・・言ってない」
「お父さんと堂上教官の接点ってあんたの両親がこっちに来たときと茨城県展の時だけでしょ? 教官は部下の父親としてお父さんと接していたはずだし、お父さんは娘の上司として好感を持っていたと思うわ。もし、お父さんが堂上教官のあんたへの気持ちを察していた上で好感を持っていたとしても、それとこれとは違うわよ」
なぜか父親は反対をしないと思っていただけに、柴崎の言葉は郁を不安にさせる。
「いい? あんたは堂上教官の『お姫様』だけど、同時に笠原家の『お姫様』なの。みんなあんたが大事なのよ。大事なあんたを奪って行く良く知りもしない男を誰が最初から好意的に見るもんですか」
「ちょっ、『お姫様』ってやめてよ! それに、・・・怖い事言わないで」
じわり、と目じりに涙が浮かぶ。
柴崎は「ごめんごめん」と苦笑した。
「ま。良く知ってても憎らしくてしょうがないんだけどね」
「え?」
「なんでもないわよ。でも、覚えておきなさいよ。みんな笠原が大事なのよ。幸せになって欲しいと思っているの。だから、笠原が連れて来る男が、本当に笠原を大事に幸せにしてくれるかどうか見定めるのよ」
柴崎の言葉に「うん」と頷きながらも考える。
「でも、柴崎。教官は、あたしの事を大事にしてくれるし、幸せにしてくれてる・・・よ? だから、大丈夫じゃないかな」
そのはにかみながらもはっきりと告げられた言葉に、柴崎は一瞬あっけに取られた顔をすると「やってらんないわー!」と叫んでミニ冷蔵庫から酒を取り出した。
「ちょっ! なによ、急に!」
突然やさぐれはじめた柴崎に、郁の方があっけに取られる。
「笠原!」
「も~なによ」
ぐびぐびと酒を飲み始めた柴崎におざなりな返事を返す。と、柴崎はふいに真面目な顔になった。
「ちゃんと『めでたし。めでたし。』にならないと許さないわよ」
堂上教官にも伝えておいてよね。と不機嫌そうな顔で言われて笑う。
「ありがとう、柴崎」
すごく嬉しい。と言う郁に、ようやく柴崎は笑みを浮かべた。
*****
お風呂に入っているときにふいに、男ばかり3人続いた後に女の子ってかなり可愛いんだろうなーと思ったら、郁はきっと笠原家の『お姫様』だよねって結論に達した話。
いくらお転婆で投げっぱなしジャーマンをしても、お兄さんたちはさぞや郁が可愛かったんではないかと。
そんな事を考えていたら、いくら堂上に好意的なお父さんでも、お父さんから堂上の人となりを聞いたお兄さんたちも、そう簡単には郁ちゃんの結婚を喜んであげられないのかも? とか。
もちろん嬉しいんだけど、とてもとても寂しいんだろうなー。
なんかうちの兄のお嫁さんのお父さんを思い出した(笑)
顔合わせの時はすごくいい笑顔だったんだけど、いざ結婚式の時はすごく寂しそうで見ているこちらが切なくなりました。
笑顔なんですけどね、その笑顔も寂しそうで寂しそうで・・・。
きっと郁のお父さんもそうなんだろうなー。
もちろん、柴崎のお父さんも鞠江ちゃんのお父さんも。
王子様の諸君! お姫様を絶対幸せにしなきゃ許さないからね!
PR
この記事へのトラックバック
トラックバックURL:
この記事へのコメント