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二作目!
今度もありがちネタ!
そして糖度は低めです。
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時期は革命前。
上司と部下です。
今度もありがちネタ!
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時期は革命前。
上司と部下です。
今日のシフトは図書館業務だった。
以前よりもマシになったとは言うものの、まだまだ失敗が多い郁は今日もいくつものミスを重ね、直属の上司である堂上に拳骨を落とされた。
己の不出来さに落ち込み、昼休みとなった今でも浮上できていない。
はぁ、とため息を吐いて郁は項垂れた。
「あたしなんでこうなんだろ」
少しでも使えるようになりたいと柴崎に無理を言って特訓してもらったあの時よりも、少しは成長しているかと思ったのに。
これでは全然だ。
せめてこの後は気持ちを引きずってミスをしないよう、この昼休み中に気分転換をしに外に出てきたのに、一向に浮上の気配はない。
「寒い…」
真冬の寒空の下、郁は白い吐息を零しながら込み上げる嗚咽を噛み殺した。
その日、郁は貸出しカウンターの業務を任されていた。
たどたどしくもそれなりにこなしていたのだ。
だが、本を利用者に手渡すために顔を上げた時、視界の隅に入ったそれにひどく動揺をした。
いくつかの本を持った堂上が、若い女性の利用者と一緒にいた。
言葉を交わし、本を開きながらそれを差し出す。嬉しそうに笑む女性が堂上からそれを受け取り、彼の説明を受けながら何度か頷いていた。
なんてことはない。一人の利用者が図書館員にレファレンスを依頼していただけだ。
ここは図書館で、自分たちは図書隊員で、利用者に望まれれば希望の本を用意する。
当たり前の光景だ。
それなのに。
その女性はとても小柄で、男性にしては背が低い堂上よりも10㎝ほど背が低かった。もしかしたら、もっと低いかもしれない。
堂上の背の低さなんて感じさせない、その身長差がひどく合う二人だった。
どんなに願っても、叶えられないものがそこにあった。
次の利用者に「すみません」と声を掛けられて我に返る。
取り繕った笑顔を貼り付けて、本を受け取るがバーコードが読み込めない。ようやく読み込んでも操作を誤りエラー音が鳴り響く。解除しようにも頭が真っ白になってどうしたらいいのか分からなくなる。
落ち着け、と呼吸を置いて何とか解除しても再び操作を誤ってまたエラー音が鳴り響いた。
いつまでたっても進まない処理に利用者の男性は苛立たしげに郁を見つめ、終いには「もういい」と本を置いてその場を去ってしまった。
しまった。と腰を浮かせた時には堂上が男性に声をかけていた。自分も行こうとしたが堂上の一瞬の鋭い眼光が「来るな」と言っているのを読み取ると、郁はどうするべきか迷う。が、すぐに次の利用者がやってきて郁は上官の元に行くタイミングを逃してしまった。
今度こそ失敗がないよう慎重になりながら、処理を進める。
視界の隅で堂上が頭を下げていたのが見えて、郁はこれ以上もなく落ち込んだ。
その後、郁のした失敗を堂上がフォローに入る、というのが3回あったところで、図書館員室に郁は堂上に呼ばれた。
「なにをやっとるんだキサマは!」
開口一番、雷一発。そして拳骨一発。
「気合をいれろ! 何を腑抜けているんだ。業務中だぞ!」
「す、すみません!」
これはもう郁が全面的に悪いのでひたすらに頭を下げるしかなかった。
「あたしの失敗で堂上教官に迷惑をかけて本当にすみません!」
声に湿り気帯びないよう、腹に力を入れる。
「…失敗は誰にでもある。部下の失敗の尻拭いは上司の務めだ。気にする必要はない。が、お前、図書館業務にも慣れてきてただろ。それが今日はどうした」
強い視線を感じる。
郁は応えられずに視線を彷徨わせた。
あなたと、あなたの隣にいた女性がお似合いだった姿にショックを受けました。
なんて。そんな事などいえる訳がない。
「…すみません」
しばしの沈黙の後、小さく、謝罪の言葉を口にする。
堂上は頑なな郁の様子にため息を吐いた。
「体調は悪くないのか?」
「はい」
「そうか。ならいい」
ぽん。と掌が頭を叩いた。
いまだにズキズキを痛むほどの拳骨を落とした掌が、励ますように優しく触れた。
それだけでもう、いろいろな想いが込み上げてどうしようもなくなってきた。
「ちょうど昼休憩の時間だな。――笠原」
「は、はいっ!」
呼ばれて、頭を上げる。
「気持ち切り替えておけ」
それだけ言うと堂上は図書館員室から出て行って、郁もまた図書館の外へと出て今に至るのだった。
「情けないなぁ…」
じわりと眦に浮かぶ涙を誤魔化すように空を見上げる。
堂上を王子様としてではなく好きであると自覚してから、なんだか今まで以上に感情の起伏が激しくなった気がする。
事、堂上に関して。
背の事なんて、気にしたってしょうがない。伸びたものは縮まないのだから。と分かっているのに、堂上と並ぶ小さい女性に対して嫉妬する。
過去、背を理由にふられた事も拍車をかけているのかもしれない。
やっぱり、女の子は背が小さい方がいいもんね。
堂上教官だってきっとそうだ。
そう決め付けて、どんよりと心がさらに重くなった。
「あ~、もうっ! ヤメヤメッ!」
このままだと浮上どころが沈没だ。
そんな事よりも反省しなければいけない事があるじゃないの!
無理やり思考を切り替える。
そう。反省するべきは、そんな気持ちに振り回されて、業務に支障を来たす事。
プライベートはどうであれ、仕事は仕事できちんとしなければいけないのだ。
ただでさえ人よりもミスが多い。
自分がミスをすれば誰が責任を取る?
上官である堂上だ。
これ以上、情けない姿を見せたくない。
胸に燻る痛みはまだあるけれど、しっかりしろと郁は思いっきり両手で頬を打ちつけた。
「何をしとるんだお前は」
「ぎゃっ!」
ふいに呆れを含んだ声が背後から聞こえて郁はビクリと体を振るわせた。
「なんつう声をだしてるんだ」
「きょ、教官」
なんでここに。と、声に出さずに問う。
「昼飯買いに出たらぼけーっと突っ立っているお前を見つけただけだ」
眉に皺を寄せる堂上の右手にはコンビニエンスストアの袋。
「というかお前、この真冬になんでそんな薄着をしているんだっ!」
突然怒鳴られて目を瞬く。
「なっ! 別に、ちょっと散歩に出ただけで、すぐに戻ろうと思ってました!」
「昼休み入ってから何分たってると思ってるんだ! 風邪をひいたらどうする! 20分もぼーっと突っ立ってやがって!」
「なっ!」
声を荒げようとしてハタと気が付く。
「・・・んで教官がそんな事知っているんですか・・・?」
もしかして。もしかしてなのだろうか。
急に勢いを収めた郁に己の失言に気が付いたのか、堂上はちっと舌打ちをして視線を逸らした。
「もしかして…ずっと様子を見ていてくれたんですか?」
どきどきと、胸が騒がしくなる。
堂上が落ち込む郁を気にしてずっと様子を伺っていたのかと思うと、嬉しくてしょうがなくなった。
「…えへへ」
なんだかくすぐったくて、緩んだ頬が戻らなかった。
そんな郁を見て、何かを言いたそうに堂上は口を開いたが、結局は眉間の皺が増えるだけで何も言わなかった。
やがて小さく吐息を零し堂上は己が羽織っていたコートを脱ぐと郁の肩にかける。
「きょ、きょうかん!」
「着てろ。風邪をひかれたらかなわん」
ぶっきらぼうに言うと、さらにコンビニエンスストアの袋を押し付ける。
「食え。腹が減ったままだとろくな事を考えんからな」
「え? で、でも・・・これ教官のお昼じゃ・・・」
「かまわん。食え」
それだけ言うと、堂上は振り返りもせずに図書館内に戻っていったのだった。
肩に掛けられたコートから、温もりを感じる。
それは先ほどまで堂上が着ていたからだと思うと頬が熱くなった。
その時、ひゅっと一瞬の風が横切り、郁のほてった頬を僅かに冷ましながら堂上のコートも攫う。郁は堂上のコートが落ちないようしっかりと掴んだ時にそれに気が付いた。
「・・・あれ?」
背は、郁のほうが高い。
でも、肩幅は堂上の方が広かったのだという事を。
堂上は男性で、郁は女性だ。
男女差の体格の差はもちろん承知していたつもりだった。
けれど、そんなささやかな事が実感を伴ってこんな形で知れる事が、これほどまでの喜びを生むのかと郁は緩む頬を押さえきれぬまま微笑んだ。
*****
そ・・・想像以上に長くなった^^;
片思い郁ちゃん。
一応、これの堂上サイドも考えているので、形に出来たらいいなぁと思ってます^^
それはまた次回に( ´∀`)/~~
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